基礎知識

電気計算の基本公式完全ガイド | オームの法則から電力計算まで

電気工事士や電気技術者にとって必須の電気計算公式を、実務経験豊富な専門家が体系的に解説します。オームの法則から電力計算、電力量計算まで、現場で本当に使える知識をお届けします。

執筆者:電気設備技術者チーム

第一種電気工事士、電気主任技術者の資格を持つ実務経験20年以上の専門家チームが執筆。電気設備設計・施工の現場で培った知識を基に、実用的な情報を提供しています。

目次

  1. 電気計算公式の重要性
  2. オームの法則(V=IR)
  3. 電力計算(P=VI)
  4. 電力量計算(E=Pt)
  5. 抵抗計算の応用
  6. 実務での計算例
  7. 応用公式集
  8. 計算ツールの活用
  9. まとめ

電気計算公式の重要性

電気工事や電気設備設計の現場では、正確な電気計算が安全で効率的な設備を構築するために不可欠です。本記事では、電気技術者が日常的に使用する基本的な電気計算公式について、実務での応用例を交えながら詳しく解説します。

なぜ電気計算公式が重要なのか

  • 電気設備の安全性確保
  • 適切な機器選定
  • 省エネルギー設計
  • コスト最適化
  • 法規制への適合

電気計算は単なる数式の暗記ではなく、電気現象の本質を理解し、実際の問題解決に応用する技術です。Reddit の電気工学コミュニティでも、基本公式の重要性について活発な議論が行われています。

オームの法則(V=IR)

オームの法則は電気工学の最も基本的な法則であり、電圧(V)、電流(I)、抵抗(R)の関係を表します。

V = I × R

V:電圧
単位:ボルト(V)
I:電流
単位:アンペア(A)
R:抵抗
単位:オーム(Ω)

オームの法則の変形公式

電圧を求める

V = I × R

電流と抵抗から電圧を計算

電流を求める

I = V ÷ R

電圧と抵抗から電流を計算

抵抗を求める

R = V ÷ I

電圧と電流から抵抗を計算

実務での応用例

LED回路の設計:12V電源でLED(順方向電圧3.3V、定格電流20mA)を点灯させる場合

  1. 抵抗にかかる電圧:12V - 3.3V = 8.7V
  2. 必要な抵抗値:R = 8.7V ÷ 0.02A = 435Ω
  3. 標準抵抗値:470Ω(最も近い標準値)を選択

電力計算(P=VI)

電力は電気エネルギーの消費または生成の速度を表し、電気設備設計において重要な指標です。

P = V × I

P:電力
単位:ワット(W)
V:電圧
単位:ボルト(V)
I:電流
単位:アンペア(A)

電力計算の応用公式

公式 用途 備考
P = V × I 基本的な電力計算 直流回路、交流回路の瞬時電力
P = I² × R 抵抗での電力損失 ジュール熱の計算
P = V² ÷ R 抵抗負荷の電力 ヒーター等の計算

交流回路での注意点

交流回路では力率を考慮する必要があります。有効電力(W)、無効電力(var)、皮相電力(VA)の関係を理解することが重要です。

電力量計算(E=Pt)

電力量は電力と時間の積で表され、電気料金の計算や省エネルギー対策の検討に使用されます。

E = P × t

E:電力量
単位:ワット時(Wh)
P:電力
単位:ワット(W)
t:時間
単位:時間(h)

電気料金計算例

エアコン(消費電力800W)を1日8時間、30日間使用した場合:

  1. 1日の電力量:800W × 8h = 6,400Wh = 6.4kWh
  2. 1ヶ月の電力量:6.4kWh × 30日 = 192kWh
  3. 電気料金(単価30円/kWhの場合):192kWh × 30円 = 5,760円

抵抗計算の応用

実際の電気回路では、複数の抵抗が組み合わされることが多く、合成抵抗の計算が必要になります。

直列接続の合成抵抗

R = R₁ + R₂ + R₃ + ...

直列接続では各抵抗値を単純に加算

並列接続の合成抵抗

1/R = 1/R₁ + 1/R₂ + 1/R₃ + ...

並列接続では逆数の和の逆数

直列接続の特徴

  • 電流は全て同じ
  • 電圧は抵抗比で分配
  • 合成抵抗は最大値より大きい

並列接続の特徴

  • 電圧は全て同じ
  • 電流は抵抗に反比例して分配
  • 合成抵抗は最小値より小さい

実務での計算例

電気計算公式を実際の現場でどのように活用するか、具体的な例を通して解説します。

住宅配線設計

問題:20Aのブレーカーで保護される回路に、合計15Aの負荷を接続する場合の安全性を確認

計算手順:

  1. 定格電流:20A
  2. 負荷電流:15A
  3. 安全率:15A ÷ 20A = 0.75 = 75%
  4. 判定:80%以下なので安全

工場設備設計

問題:三相200V、10kWのモーターの定格電流を計算

計算手順:

  1. 公式:I = P ÷ (√3 × V × cosφ)
  2. 力率を0.8と仮定
  3. I = 10,000 ÷ (1.732 × 200 × 0.8)
  4. I = 36.1A

実務のポイント

  • 安全率を必ず考慮する(通常80%以下で使用)
  • 温度上昇による抵抗値変化を考慮
  • 電圧降下の影響を計算に含める
  • 将来の負荷増加を見込んだ設計

応用公式集

基本公式を発展させた、より実践的な計算公式をまとめました。

三相有効電力

P = √3 × V × I × cosφ

V:線間電圧、I:線電流、cosφ:力率

三相皮相電力

S = √3 × V × I

単位:VA(ボルトアンペア)

単相回路の電圧降下

ΔV = 2 × I × R × L

I:電流、R:単位長さあたりの抵抗、L:ケーブル長

三相回路の電圧降下

ΔV = √3 × I × R × L

三相回路では√3倍となる

短絡電流(簡易計算)

Isc = V ÷ Z

V:電源電圧、Z:短絡点までのインピーダンス
短絡電流計算は安全設計に直結するため、詳細な計算が必要です。

計算ツールの活用

現代の電気技術者は、正確で効率的な計算のために様々なツールを活用しています。当サイトの計算ツールもその一つです。

オンライン計算ツール

当サイトでは、基本的な電気計算をオンラインで行えるツールを提供しています。

モバイル対応

スマートフォンやタブレットからも利用可能で、現場での計算に便利です。

  • レスポンシブデザイン
  • タッチ操作対応
  • オフライン表示可能

計算ツール使用時の注意点

  • 入力値の単位を確認
  • 計算結果の妥当性をチェック
  • 安全率を考慮した設計
  • 複雑な計算は専門ソフトで検証
  • 法規制への適合を確認
  • 定期的な計算式の見直し

より詳細な電気計算については、Electrical Engineering Portalなどの専門サイトも参考になります。

まとめ

電気計算の基本公式は、電気技術者にとって必須の知識です。本記事で解説した公式を理解し、実務で正しく活用することで、安全で効率的な電気設備を設計・施工することができます。

重要な基本公式

  • オームの法則:V = I × R
  • 電力計算:P = V × I
  • 電力量計算:E = P × t
  • 合成抵抗:直列・並列の計算

実務での活用ポイント

  • 安全率を必ず考慮する
  • 計算結果の妥当性を確認
  • 法規制への適合をチェック
  • 継続的な知識のアップデート

さらなる学習のために

電気計算の知識を深めるために、以下のような学習を継続することをお勧めします:

専門書籍

  • 月刊「電気計算」
  • 電気設備技術基準
  • JIS規格集

資格取得

  • 電気工事士
  • 電気主任技術者
  • 電気工事施工管理技士

実務経験

  • 設計業務での応用
  • 現場での検証
  • トラブル対応経験

当サイトでは、今後も電気計算に関する実用的な情報を発信していきます。ご質問やご要望がございましたら、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。